平成23(2011)年4月、「とどろみの森学園(小中一貫校)」の隣に、幼保一体型施設「みすず学園森町こども園」が開園しました。 平成18(2006)年10月より、幼稚園と保育所の枠組みを取り払い、それぞれの良いところを活かすことを目標に、 「認定こども園制度」がスタート。以来、同園と同じような「こども園」が全国各所に誕生しているようですが、 幼稚園と保育所の連携にはどういった意味があるのか、保護者にとってのメリットや、 「みすず学園森町こども園」が目指す教育、園児たちの日常について、園長の小倉千加子さんにお話をうかがいました。
「みすず学園森町こども園」 小倉千加子園長
2012年1月インタビュー
幼稚園と保育所の垣根をなくすのは、現場からするとたいへん難しく、当初の計画どおりではありませんが、「幼稚園の保育所化」、つまり、子どもを長時間預かる施設としての「こども園」の設立が全国的に進んでいます。近年、お母さんが就労しておられる率が非常に高くなり、お子さんを預かる時間を保育所並みに延長することが、幼稚園にも求められているのが現状です。幼稚園に通わせたいけれど、預かり時間の問題で働きづらい。けれども、保育所ではなく、幼稚園できちんと教育を受けさせたい。つまり、「中身は幼稚園、形式は保育所」というニーズが高まっているということです。
そこで、保育所と幼稚園を問題なく接合させるためには、一つの建物の中に、両者が共にあるのではなく、0歳~2歳は保育所、3歳になったら幼稚園というふうに、年齢によって二分するのが最良だということになりました。同一年齢の子どもなのに、幼稚園の子は音楽リズムの学習をし、保育所ではお昼寝、というのは問題ではないかなと。同じ年齢の子は同じことをして、放課後になって初めて、家に帰る子と預かり保育の子に分かれるのです。こども園にはいろんなカタチがありますが、うちと同じようなこういうスタイルが多いと思います。 職員については、保育士と幼稚園教諭で、求められる資格が異なりますが、現在は、両方の資格を取得されている方が多く、幼保一体型の施設では、どちらかで採用されることになります。
例えば、お母さんが働いておられる場合、0歳児で保育所に入ったお子さんは、3歳になった時、ほぼ自動的に幼稚園に上がれます。幼稚園では、預かる時間を延長していますし、お母さんが第二子の出産で仕事を辞められたとしても、退園しなくてもよいのです。
保育所なら、「仕事を辞められたのなら退所してください」ということになり、子どもはあっちに行ったり、
こっちに行ったりということになります。ところが幼稚園は、保護者と園の直接契約ですから、働いておられようがおられまいが自由です。
放課後の預かり保育を選ぶかどうか、という違いだけです。さらに、お母さんが再度復職されても、子どもさんは引き続き同じ場所にいることができます。
ある意味で、保育所運営の硬直した部分が、認定こども園にはないと言えます。
当園では、ベテランの職員が預かり保育を担当し、1階に専用の部屋を設けています。2時に幼稚園が終わると、お母さんが働いておられる子は、「ただいま~」とそこに帰り、迎えに来られる7時頃までを過ごします。幼稚園は費用が一律で、預かり保育の費用は非常に低く設定しているので、懐にやさしいというメリットもありますね。
もう一つ、私どもの特徴は、幼稚園教育での豊富な実績がありますので、0歳~2歳の保育園でも、3歳から幼稚園教育を受けるための準備状態をつくるような保育をしているということです。
つまり、ただお子さんを預かるのではなく、保育園の段階から、能力を引き出すことを考えています。言い換えると、「0歳からの幼稚園」でもあるのです。長年経営している「みすず学園桜ヶ丘幼稚園」と「みすず学園桜ヶ丘保育園」は、こども園ではありませんが、同様の考えに基づき、両者を緩やかに連携させながら実績を重ねてきました。
教育理念ということで申しますと、学力を「生きる力の源」と考え、学力の基礎を培うことを目指しています。学ぶ態度を養うこと、つまり、人の話を聞くことができる、集中できる、挨拶できる、そんな子どもを育てていきたい。家庭外であるこの園で長時間を過ごすわけですから、本来なら家庭で行うべきしつけも含めて、こちらで教育を行います。
具体的には、幼稚園ではすべてを設定保育とし、時間割を組んで遊びと学びの境目をなくし、カリキュラムに則って授業(うちではそう呼んでいます)を行います。言葉や文字、数、楽器の演奏など、小学校に入学するまでにきちんと身に付けるように。また、美術などの情操教育や体育にも力を入れています。幼児教育には適時性というのがあり、すでに十分できる力が備わっているのに誰も教えないのはもったいないと思うのです。子どもは計り知れない可能性を持っていますから、どういう環境を作ってあげるかということが、とても大切なことなのです。
私は、大学・大学院で教育心理を専攻し、大学で教員を務めていた時も、初等教育の学部で教員を養成する場におりました。研究すればするほど、幼児は大人が思っている以上の能力を持っていることを実感します。しかも、一人ひとりが違うのですね。人間の発達とは実に奥深いものだと思います。
公立の小中学校に隣接するカタチで、私立のこども園があるというのは、非常に珍しい配置ですね。こちらに来られる保護者の方は、教育意識の高い方が多く、お隣の小中一貫校への進学は一つの選択肢として、子どもさんの個性に合わせて自由に進路を選んでいかれるのではないでしょうか。
現在の当園の定員数は、0歳児が6人、1歳児と2歳児が各12人(以上、保育園児)、3歳児が25人、4歳児・5歳児が各35人(以上、幼稚園児)。大阪府では、近い将来の定員増も検討されています。新しく引っ越してこられるご家族を含め、地域の皆様のために、いっそう充実した幼児教育を実践していきたいと思います。